DX啓発や先進企業とのマッチング
経営者と現場リーダーを両面支援

中国経済連合会

清地 秀哲 常務理事
働き方改革支援特集|広島経済レポート|2021年12月9日号

本年度から中国地域の企業のDX推進を本格化している。私が2015年にマツダから中国経済連合会(中経連)に出向してきた当時は「デジタルイノベーション」と呼び、既にデジタルに注力する動きはあったが、ここにきて急速に機運が高まっている。幅広く取り組みが進んでいる実感があり、これをさらに広げていくための支援策を展開していく。

私が在籍した自動車産業は早くからデジタル化に着手した業種だと思う。たとえばエンジン開発は以前、「100時間耐久」などと言って、実際に近い環境で稼働させて耐久性を担保していた。そこから、あらかじめ問題点を物理的に分析し、仮説を立て検証する体制に移行していった。当時はデジタル技術が今ほど高くなかったが、そのなかで試行錯誤を続けて今がある。
 モデルをベースにシミュレーション機能を活用し、開発期間を飛躍的に短縮させる「モデルベース開発」はその集大成だろう。

デジタル人材の育成へ

中経連では「デジタル人材の育成」「先進企業の発掘とマッチング」「DXの啓発」を3本柱に事業を展開している。特に注力するのがデジタル人材の育成だ。8月からものづくり企業のIoT実装に向け、現場の課題解決ができる現場リーダー「ファクトリーサイエンティスト」の育成に取り組んだ。全5回の講座に19人が参加。超音波や圧力などの各種センサーから得たデータをクラウド上で分析するシステムを各自で製作してもらった。実際に手を動かした経験があれば、現場に生かしやすくなる。

昨年度からはビッグデータやAIの活用に不可欠な「データサイエンス」講座も始めた。大阪大学が主体に立ち上げた数理人材育成協会と連携し、社会人向けのコンテンツ制作を依頼し、リーズナブルな受講料で開催した。

首都圏の先進企業28社を発掘

先進企業の発掘とマッチング事業は、優秀な技術を持つ首都圏などの企業の発掘・選定に取り組み、28社をピックアップした。AI、機械学習、画像認識、モーター、ロボット、受発注システムなど多彩なサービスがそろった。現在、当会ホームページに各社の情報を掲載しており、参考にしていただきたい。それらの企業と地元企業のマッチングに向け、交流会やセミナーを開催し、踏み込んで具体的なマッチングにつながる機会創出に取り組んでいる。反応は良く、手応えを感じている。

DX啓発事業では8月末、INDUSTRIAL-X(東京)と共催で大型カンファレンスを開催。先駆的な経営者らが登壇し、全国から700人にオンライン参加してもらった。特にデリカウイング、オタフクソース、八天堂、三島食品の地場食品会社の各社長によるセッションは興味深かった。三島食品の末貞操社長は自身でシステムを組め、コロナ禍でもオンライン商談の環境をいち早く構築したそうだ。地域にはすごい会社があると改めて実感した。

以前はシステムを利用するために、専用のソフトウェアや端末、サーバを購入するなど初期投資が必要で した。近年は、月単位で利用できるクラウドサービスが数多く提供され、顧客や在庫管理など特定業務に特 化したもの、AIを利用して幅広く使えるOCR(文字認識)など、選択肢も増えました。導入しやすい環 境が整い、費用の障壁が相対的に低くなった今、デジタルが苦手だからと言っていると、他社がデジタル技 術を活用したことで相対的に競争力の低下につながりかねません。費用の問題も重要ですが、DXに取り組 む意識の醸成が最優先の課題だと本県では考えています。

経営者と現場の両輪で進める

今後は地元エスアイヤー(システム会社)との連携も課題だろう。システムを導入しても、それを継続運用していくための指導役が必要であり、それは地場企業が担うべきだ。ビジネスチャンスであり、DXの推進役の一端を担ってもらいたい。
DXを進めるためには、トップと現場リーダーの両輪がうまく機能することが大切だ。トップダウンで推し進める企業もあれば、現場の改善活動を起点としたボトムアップの企業もある。その両面に対する支援を来年度以降も拡充していく方針だ。

関連サイト :  DX推進に取り組む企業マインドの醸成セミナー
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