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こぼれ話

こぼれ話

土地、仕事、女房にほれる

 売り手よし、買い手よし、世間によし。近江商人の「三方よし」の考えは、いまも変わることのない企業経営の要諦だが、折々、業績ファーストに走り、違法な商いが世間を騒がす。やがて経営破綻する先は多く、長く経営を続けることは並大抵ではない。
 近年は地球を守り、ワークライフバランスを大切にする会社が人気を集める。若者が就職先を選ぶときの大事な指針になり、人手不足にあえぐ企業にとってよそ事では済まされない。社会貢献への意識も高く、地域と歩む中小企業に関心を寄せる若者も増えているという。
 軽自動車販売のサンボレ(佐伯区千同)は2006年に創業来、大切にしていることがある。会社は地域によって生かされており、少しでも地域に役立つことはないかと考え、いつも気を配る。いまは緊急車両のレスキュー業務に力を入れている。毎年のように発生する自然災害。車を生かせないかと18年からスタートさせた。ここ数年は毎年3000件以上の出動要請に応じ、県内の登録事業者のうち最多となった。小田修久社長(46)は、
「平均して1日に約10件、延べの出動時間は2万2000時間に及ぶ。車に関する緊急時の対応ノウハウはプロと呼べるまでに高まったと思う。ハザードマップを見ると当社のある地域は70年ごとに浸水の可能性がある。自治体と防災協定を結び、効率的に運営できないだろうか。被災地へレッカー車で駆け付けるがけん引できるのは1台だけ。何とももどかしい。豪雨の被災地に近い地域の小学校などを開放してもらえれば、レッカー車をピストンで走らせて被災車両を運ぶことができる。現場は一分一秒を争う。経験で得たノウハウを生かせる方策に落とし込みたい」
 社名は「三惚れ」に由来。土地にほれ、仕事にほれ、女房にほれる。家訓として祖父から受け継いだ言葉をそのまま社名とした。
「自分のいる場所に根を張り、地に足を着けて仕事に取り組む。周囲の人に役立ち、家族や仲間を守り抜く。祖父の教えが礎となっている」
 20年春から新型コロナ感染が拡大した時は、公共交通機関には乗りたくないが、車を持っていない近所の人のために無料レンタカーを実施。経済的に追い込まれた人には車検の基本工賃を無料化するなど、気付いたことは端から手を打ってきた。設立の翌年に始めた「サンボレ祭り」は毎年、来店者が1500人を超える地域のイベントに定着。下校する小学生が店に立ち寄ってトイレを借りていくのが日常の風景だった。19年に佐伯区屋代から現在地に移転した直後のコロナ禍で、その祭りは中止しているが機会をうかがう。
 ここ数年、売上高は前年比2割増で推移し、創業来の黒字を続ける。従業員は9人。
「社会性、独自性、経済性の順番で物事を考えていくことにしている。むろん利益は必要。だが最も優先すべきは社会に貢献することだと信じている。きれいごととよく言われるが、公益性のある資本主義を実現することが、一番の経営テーマだ」
 今年は本社近くに新築した指定工場2階に半面のテニスコートを整備した。地域の子供たちが人の目を気にせずに体を動かせるようにと広く解放する。
 いつも一生懸命。三方よしの一つでも信を失えば商いは成り立たないと話す。

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