こぼれ話

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光、土、水の循環

 牛乳や乳製品メーカーの砂谷(佐伯区湯来町)が、今年で創業60周年を迎えた。30年前に発刊された同社の30年史によると、そもそも創業者の久保政夫氏(故)と牛乳とのかかわりは80年前にさかのぼる。―小説家を志し上京したが、体調を崩し断念。この時、「人生で最も大切なことは健康」と思い知らされたのを転機に、1930年単身で伊豆七島の八丈島に渡り、見よう見まねで野菜づくりと乳牛飼育を始めたが、元来が研究熱心であり、10年の間に「島の指導者」と言われるまでに。しかし、末の妹の死をきっかけに、23頭の乳牛を連れて砂谷村(現湯来町)へ帰郷。開拓した山林に牧草を植え、酪農業を始める―。
 昨年7月、三代目に就いた久保太一郎社長は、
「私も仕事柄、農業や健康に関する専門書を読みあさりましたが、すべては祖父政夫が説いた『光と土と水』が農業や健康の原点であり、自然とのバランスに集約されてくるように思います」
 政夫氏が信条を述べた、興味深いエッセーがある。その一節に「日本の国には資源が少ないとよく泣き言を聞きますけど、資源は技術によって掘りさげれば無限のものです」と。50年を経て新鮮に響く。くだりを紹介したい。
―農場というのは、太陽の光を草の形なり、米の形なり、果実の形なりにとらまえることなのですから、まず光線が豊富であることが第一条件です。土を利用していますから土壌が肥沃であることが大切。また土壌の養分は水にとけて食物に吸収されるから、水分が十分あることが必要です。この3つの要素がそろっていれば、光線の量に応じて作物はできてくれます。ところが一つでも少ないものがあれば食物の生産量はその生育に必要なすべての環境要因中供給割合の最も少ないものに支配される「最少量の法則」にしたがって、その最も少ないものの線までしか植物はできてくれません。〈略・前述の一節に続き〉人間が多いのも、雨が多いのも、風が多いのも、光が多いのも資源です。この資源を人間の幸福のために生かすか、生かさないかだけのことです。〈略〉あんなに能力ある民族かとびっくりするほどの力を発揮するために、日本人にもっと牛乳を。(1958年・中国新聞・日曜エッセイより)
 何とはなく、戦後間もない日本の食糧事情が伝わってくる記述も。それから50年を経て世界的な資源・環境問題が大きくクローズアップされているほか、日本の農業のあり方や食料自給、地産地消の農水産物などに対する関心が高まってきた今こそ、日本を守ってくれている光、土、水の大切さに謙虚になり、人間を幸福にするために資源、技術を生かさなければならない―という政夫氏の言葉は、現在の日本に対し、物事の根本を改めて問い掛けているように思える。
 第三創業期を迎えて、新たな乳製品開発などにチャレンジしている久保社長は、
「おいしい牛乳は土づくり、草づくりをモットーに自家牧草にこだわっています。自家牧草は輸入乾燥牧草よりβ‐カロチンを多く含み、牛乳の甘みが増します。勉強すればするほど、食品と健康をつないで光、土、水が循環している摂理の妙に驚かされます」

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