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こぼれ話

こぼれ話

新しい需要を創る

 当時、町の酒屋さんが次々姿を消し、さらに日本酒の消費量が低迷していたから、〝日本のお酒〟に特化するという酒商山田(南区宇品海岸)特有の「逆転の発想」が生まれたのだろう。
 同社の山田淳仁(じゅんじ)社長(58)は青山学院大を卒業後、大手損保会社に勤めたが、父親の体調不良をきっかけに、1989年に家業を継ぐ。酒販免許の自由化とともに、大手の参入やディスカウント店の登場で価格競争の激化が必至の様相を呈し、「目の前に死活問題が横たわり、強い危機感があった」という。
 これまでと同じことをしていたのでは、消えてしまう。もんもんとするうち、市場が縮小傾向の「日本酒」なら・・・とひらめく。市場が拡大する業界は競争が激しく、縮小傾向の市場にこそ、よりチャンスがあると読んだ。中でも、まだ珍しかった純米酒や吟醸純米酒などの特定名称酒に着眼し、猛勉強を始める。全国の蔵元を巡り、居酒屋などの取引先に教わり、売れ筋情報を集め、本物の品質を備える地方の小さな蔵元、銘柄の発掘などに心血を注いだ。
 特定名称酒を選択することは、ほかを「捨てる」決断でもあった。祖父が戦前の31年に創業。以来、こつこつと築いてきた酒屋の売り上げはビール75%、タバコ15%、日本酒(普通酒)4%を合わせて95%を占める。
 これを捨てるには相当な勇気が必要だったが、「夢を見、夢を追い、夢を叶える」という志、ワクワク感がはるかに上回った。夢に日付を入れている。決して順風満帆な船出ではなかったが、日々取り組んだ結果、現在は市内に4店舗を展開し、日本酒4069アイテム、本格焼酎1465アイテム、日本ワイン455アイテムを取り扱う。取引先は国内385社に広がる。
 差別化、独自化などの基本的な考えに基づき、とことん「酒屋らしくない酒屋」の店舗づくりにこだわった。2011年に幟町にオープンした2号店のコンセプトを「サロン」とし、高級車を販売するショールームを参考にした。15年の広島駅新幹線口名店街へ出店した3号店は「シンプル&コンパクト」を掲げる。今春、エキシティ・ヒロシマにオープンした4号店は「アメイジングプレイス」とし、グリム童話のヘンデルとグレーテルをイメージに描く。こうして酒商山田ならではの経営スタイルを構築し、12年に「中国ニュービジネス大賞特別賞」を受ける。
 追い風も吹いた。日本酒の高級、本物志向が高まり、特に女性や若い世代にファンが増えているという。しかし、日本酒の全体売り上げは1973年をピークに、2015年には同年の3割を切るまで落ち込んでいる。市民球場からマツダスタジアムへ本拠を移し、新たなカープファンが生まれたのと同様に、共に発展を目指す「戦わない経営」方針を実践しつつ、逆転の発想で〝新たなファン(需要)〟を創ったといえよう。
 どんな料理にどんな銘柄が合うのか。手間暇を惜しむことなく、さまざまなお酒の会やイベントも開く。家業を継いだ28年前の年商は1億5000万円で、今期は新店も加わり、初の大台の11億円突破を見込む。チャンスをものにできるかどうか、経営者の運と腕次第なのだろう。

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